戦国時代、甲斐の虎と怖れられ、戦国最強とうたわれた武田信玄。
その強さの秘密は一体何だったのか?
それは、信玄の巧みな人心掌握術により、他国に比類ない強固な家臣団を作り上げたことに尽きます。
信玄が残した数々の名言は、現代の組織をまとめるリーダー(経営者)の戒めとなる言葉も多いです。
今回はその中から、特に僕自身が感銘を受けたものを、個人的な解釈とともにご紹介致します。
武田信玄の残した珠玉の名言10選
負けまじき軍に負け、亡ぶまじき家の亡ぶるを、人みな天命と言う。それがしに於いては天命とは思はず、みな仕様の悪しきが故と思うなり
直訳すると「負けるはずのない相手に負け、滅ぶはずのない家が滅ぶ。それを人は天命と言い張るのだが、自分にはそうだと思えない。やり方が悪いだけだったからだと思う。」ということ。
上手くいかなかったことをただ「運が悪かった」と開きなおっていませんか?
なぜそういう結果になってしまったのか?
その原因を分析をすることが大切ですし、まずそうならない為にはどうしたら良いのかを常に先読みしておくことが肝要ということですね。
一生懸命だと知恵が出る、中途半端だと愚痴が出る、いい加減だと言い訳が出る
本当に懸命に取り組めば必ず必ず知恵が出てくるもの、知恵が出ずに愚痴や言い訳が出るというのは、それは懸命さが足りていないということ。
逆に言えば、今の仕事は、そこまで懸命になれることなのかどうか?ということを考えさせられる言葉でもあります。
懸命=命を懸ける。
皆さんは、今の仕事にそこまで取り組めていますか?
為せば成る 為さねば成らぬ 成る業を 成らぬと捨つる 人のはかなさ
これも非常に有名な名言ですね。
まずはやってみよう!しっかりと正しく取り組めば実現出来ることなのに、それさえしない人間に、決して成功はないということです。
そんなの、やっても仕方がない…と最初から諦めていませんか?
また、そういった前向きな意見を言う人を、端から否定するようなことをしていませんか?
百人のうち九十九人に誉めらるるは、善き者にあらず
少し疑い過ぎ!?なのかも知れませんが、人間には光と影の部分があり、光の部分が大きい人ほど、それに比例して影の部分も大きいということ。
影の多い人ほど、皆の前で良い顔ばかりする…確かにそうかもしれませんね。
我、人を使うにあらず。その業を使うにあり
非常に短い言葉ではありますが、リーダーは単に人を使うということではなく、その人の持つ資質や仕事に対する意欲を見抜いて登用すべきであるということ。
人というのは活かすも殺すもリーダー次第…といったところでしょうか。
疾きこと風の如く 徐かなること林の如く 侵略すること火の如く 動かざること山の如し
これは皆さんご存じの通り、『風林火山』のことですね。武田信玄といえばこのセリフ。
武田軍の軍旗にも書かれていた一文であり、武田軍の戦い方(戦法)を現す言葉でもありますが、このフレーズには、物事をチームで推し進める際のミッションに通じるものがあります。
スピードを持って取り組み、攻守に渡って最後までブレずに目的を遂行することが大切だということではないでしょうか。
人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり
これは人材がいかに重要かということと、人の持つ心理状態(モチベーション)が物事の成否を決する重要な要素になり得るということです。
信玄がいかに『人』との関わり方を大事にしていたのかが、非常に伝わってくる言葉ですね。
信頼してこそ 人は尽くしてくれるものだ
とてもシンプルな言葉ではありますが、部下を信頼しないリーダーに、人がついて来るなんてことはあり得ないということですね。
信玄は家臣とのコミュニケーションを大切にし、情に厚い一面があったと言われています。
目的を達成させるには、結局人と人との繋がりが大切だということなのでしょうね。
渋柿は渋柿として使え。継木をして甘くすることなど小細工である
『渋柿』は、人間の性格や個性を言い表しているのでしょうか。
世の中には色んな人間がいて、必ずしも自分にとって使いやすい人間ばかりではないです。
使いにくく見える人間にも、それはそれで良い使い方があるということでしょうね。
武将が陥りやすい三大失観
一、分別あるものを悪人と見ること
一、遠慮あるものを臆病と見ること
一、軽躁なるものを勇剛と見ること
これは、リーダーによく起こりえる失策を表した名言です。
部下の表面的な部分だけを見て、すべてを知ったかのように思うのは、単なる思い上がりであり誤認を誘発するという戒めではないでしょうか。
分別がある人間というのは、とても思慮深く、慎重な判断をしたり、時にはその思考力で合理的な判断を下したりします。
そういう人間を見て、「コイツはなんか企んでる。悪いやつだ!」なんて判断するのは愚の骨頂ですね。
謙虚で遠慮がちな人間を、単なる臆病者と決め付けるのもいかがでしょうか。
軽はずみな行動をする、いわゆる「調子にのる」タイプの人間を、勇ましく感じるのもまた同様ですね。
武田信玄の強さの秘密
いかがでしたでしょうか?
乱世の戦国時代で、最強といわれた武田信玄。
信玄が、戦での戦術面や智略、謀略に優れた名将であったことも紛れもない事実ではあります。
しかし、その強さの礎となるのは、後に『武田二十四将』とも呼ばれる、それぞれの個性を生かした、深い信頼関係の基に成り立つ強固な家臣団を形成していったことだということが、これらの名言から読み取れますよね。
しかもその名言は、現代社会に生きる我々にも深く突き刺さるものばかり。
450年近く経った今でも、その言葉のひとつひとつにリーダーとしての教訓や、人生への戒めが詰まっています。
今回ご紹介させて頂いた、これらの言葉が、将来にわたり組織のリーダーとして部下を持つ方の少しでもお役に立つことができれば幸いです。
本日も最後までお読み頂きありがとうございました。
武田信玄のことをもっと知りたい方へのおすすめの本
武田信玄 風の巻
■著者:新田次郎 全4巻
武田信玄の力強い人生を知れる大作
NHK大河ドラマの原作でもある『武田信玄』は、風・林・火・山の巻の4巻からなる歴史小説です。
信玄が父親を追放するところから、信玄の死と3年後の葬儀の様子までを描きます。
戦以外の描写も多く、信長や家康も恐れた武将であった信玄の人間性を感じ取れる作品です。
風林火山
■著者:井上靖
軍師、山本勘助を通して、武田信玄を感じる
『風林火山』は武田家の名軍師であった山本勘助を主役とする作品です。
映画化され、大河ドラマの原作にもなりました。
物語の中心となるのは、勘助の信玄への忠誠心と由布姫(信玄の側室)への愛情です。
武田家のために働き、その才能を多大に発揮して武田軍を勝利へ導く勘助。
その軍師としての素晴らしさはもちろんですが、彼の愛憎、苦悩がこの本に深みを与えているのでしょう。
人間の心理描写がうまく、信玄も由布姫も魅力的な生き生きとした人物として描かれています。
武田信玄と勝頼 ~文書にみる戦国大名の実像
■著者;鴨川達夫
『武田信玄と勝頼―文書にみる戦国大名の実像』は、古文書を読み解きながら武田信玄と勝頼の実像を明らかにしていこうとしている書籍です。
古文書の読み方、戦国時代の文章の見方、解読の仕方を丁寧に説明しています。
文書から読み取れる驚きの史実を知ることができるでしょう。
武田信玄は実は文書を書くのは不得意で、臆病で小心者であったそうです。
信長も恐れる信玄というイメージがありますが、逆に信長を恐れていたことや信長に許しを乞うても許されなかったことなどが述べられています。
信玄の三河攻めも無かったという話もあり、自分の知っていた信玄像が崩れ去ってしまうかもしれません。